2011/8/25 太陽光発電設備は「メンテナンスフリー」か?
「太陽光発電はメンテナンスフリー」とよく言われます。
では、ほんとうにメンテナンスフリーなのでしょうか。その質問の答えは??。
YES? NO?
メンテナンスフリーという言葉が、エアコンや冷蔵庫のようにフィルタの交換や掃除をするような手入れが不要、という意味ならば、答えは「YES」です。
屋根に取り付けた太陽電池は手入れをしなくても毎日黙々と電気をつくり続けてくれます。
ところが、メンテナンスフリーという言葉が「故障しない」あるいは「点検しなくてもいい」という意味で使われたり、理解されているとしたら、答えは「NO」です。
発電設備ですので、感電、火災などのリスクがまったくないとはいえません。
また、工業製品ですから絶対に故障しないとは断定できません。
日常の点検は?
六月三〇日に電気事業法が改正されました。これにより、一般用電気工作物となる太陽光発電設備の範囲が二〇kW未満から五〇kW未満に拡大されました。
一般用電気工作物とは、家庭や小規模店舗で使われる電気設備のことで、比較的危険性が低いものという分類になります。
一般用電気工作物ではない発電設備は、保安規制(保安規程の作成・遵守、主任技術者の選任など)が設置者に義務づけられています。
二〇kW以上五〇kW未満の太陽光発電設備は、これまで保安規制が必要でしたが、今回の改正で不要になりました。
これは、太陽光発電の安全性が高まったという事もありますが、同時に設置者(太陽光発電を設置した家主など)が自ら点検を確実におこなうことが必要になりました。
この改正を受けて一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)から太陽光発電設置者に対して、日常点検と定期点検励行のお願いが出されています。
主な点検項目は以下の通りです。
・異音、異臭がないか、またモニターによる発電状況の確認により、日常の点検を行う。
・接続箱、パワーコンディショナー等、通常の状態で目視できるところは、外箱の腐食、サビ、外部配線の損傷等を目視により確認を行う。
・屋根上の太陽電池モジュールの目視点検を行う場合は、メーカーや専門の業者に相談、安全を確保した上で目視点検を行ってもらう(ユーザーが屋根に上がっての点検は、危険なので避けて下さい)。
また、メーカーや専門の技術者に対しては、「太陽電池アレイ、接続箱、パワーコンディショナーの接地状態の確認について、所定の測定条件で、絶縁抵抗値を測定し、規定値以内であることの確認を行う」ように、との要請が出されています。
実際の発電量チェックこそ
さて、こうした点検も重要なのですが、最も簡単で確実な点検方法は、発電量をチェックすることです。
毎月の発電量データの蓄積が、不具合の発見につながる可能性が大きいのです。
太陽光発電の機能は発電することです。
ですから「システムが何kW」ではなくて、実際の「発電量が何kWh」の方がより重要になります。
これらを実施していれば、より安全で、安心度も高まります。
ソーラーパネルの設置が家屋をむしろ強化する?
〜太陽光発電所ネットワークの報告〜
太陽光発電を設置した家が、東日本大震災によってどんな被害を受けたの、気になるところです。
最近、注目すべき見解が出されました。
今回の大震災による太陽光発電の被害状況を調査していた太陽光発電所ネットワーク(PV-net)と東京工業大学ソリューション研究機構(黒川浩助特任教授)の中間報告です。
以前より日本では、「屋根を軽くして家屋の重心を低くするほど、地震の揺れに強い」といわれていました。
ですから、全体で三〇〇〜四〇〇kgの重量があるソーラーパネルを搭載すれば、屋根が重くなり家屋の重心が高くなり、地震の影響をより強く受けてしまうのでは、という懸念がありました。
ところが、今回実際に被災地を調査してみると、瓦などの屋根材は破損していても、ソーラーパネルを設置した部分は健在であるなど、むしろ家屋の構造強化につながっている可能性があるのではないかとみられるのです。
断定は避けながらも、「ソーラーパネルを設置する際の架台などが、結果として家屋の構造強化に役立っているのでは」との見解が示されました。
大震災で震度六の地震に遭った我孫子市・船橋市(千葉県)の設置者へ行ったアンケート調査でも、太陽光発電システムはほとんど損傷を受けなかったとのことです。
太陽光発電装置が、住宅等の構造強化に活用されることが期待されています。